短編小説

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幼馴染という関係

「将来はね、キョウちゃんと結婚したいな」  よくある子供の時の会話。  隣に住み、いつも一緒に遊んでいた里美の、5歳の頃の言葉だ。  正直、俺もその当時は本気でそう思っていた。
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迷信

 その日は、2月14日だった。  つまり、バレンタインデーというやつである。  その日の学校内はなんか、色めき立っていたというか、キャッキャウフフといった状況だった。  リア充じゃない俺からしたら、実に不愉快な日だったということだ。  そして、その日の放課後。
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殺してください

 夜の病室内。    看護師さんの見回りも終わり、患者のほぼ全員が寝静まった頃。 「……殺してください。……殺してください」  この時間になるといつも、そう呟く声が聞こえてくる。
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生まれてきた意味

 男はアンドロイド技師として世界でもトップクラスだった。  日々、最先端の技術を生み出していくその姿は、世界中の技師からの憧れの的となっている。  だが、男は何も一人でここまできたわけではない。  妻の献身的な支えがあったからこそ、研究に没頭出来ていたのだ。
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仮面の下

 私の地元には『なまはげ』という風習がある。  今では結構、有名だから知ってる人も多いと思う。  この、なまはげという風習なんだけど、鬼の格好をした人が家に来て、子供に悪いことをしていないかと脅かすものなんだよね。
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儚いもの

 女神はずっと不思議だった。  なぜ、人間は短い時間しか生きられないのに、願望なんてものを抱き、足掻くのだろうと。  たかだか、100年ほどしか生きられないのに願望なんてものを抱くのか。  人間よりも寿命が短い生き物はもちろん、カメやクジラなどの人間よりも長い寿命を持つ生き物でも、人間のように願望を抱くものなんていない。
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生命線

「政義くんが、私の生きる生命線だよ」  これは愛佳の言葉で、俺が駆け落ちを決めた言葉だ。  愛佳は中学生の頃に両親が離婚してから、親に虐待され続けてきた。  学校を休むことや体に痣を作ってくることもザラだった。
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人真似

 僕は真似っこが得意だ。  犬とか猫とか、スズメとか牛とか豚とか、いろんなものの真似ができる。  でも、一番得意なのが人の真似だ。  その人の正面に立って、真似をする。  そしたら、まるで鏡に写っているみたいな感じになる。
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おとぎ話

 人は誰しも、おとぎ話に憧れる。  誰だって、一回はつまらない毎日から抜け出して不思議な世界に行って、大冒険に繰り出したい。  そう思うことはあるはずだ。  毎日毎日同じことの繰り返し。
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餓鬼

 これは表に出ることのない、非公式の文献の話だ。  いや、文献というよりは日記と言った方が近いだろうか。  これはある妖怪、餓鬼による話になる。  昭和くらいまでは妖怪は妖怪のまま過ごすことができていたのだという。  文明が進むにつれ、妖怪という存在はただの創作物として認知されるようになった。
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