短編小説

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あの頃のお姉ちゃん

 私には大好きなお姉ちゃんがいた。  4つ上のお姉ちゃん。  お母さんとお父さんは共働きで、ほとんど2人は家にいなかった。  だから、小さいころからお姉ちゃんが私の母親代わりでもあったのだ。  お姉ちゃんは優しく、厳しく、そして真面目だった。
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背伸び

 早く大人になりたい。    女は男よりも早く精神的に成長する。  そんな言葉をどこかで聞いたことがあった。  その言葉を聞いたとき、私は妙に納得した記憶がある。
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終わりの言葉

 さよなら。  別れましょう。  もう二度と会わない。  それらは終わりを意味する言葉だ。
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見守ってくれた存在

 両親はとても忙しい人で、いつも家にいなかった。  だから、私にとって、キョウが親代わりであり、兄の代わりであり、友達の代わりだった。 「雫は寂しくないのかい? 家に一人だけなんて」 「ううん。寂しくないよ。だって、キョウちゃんがいるから」
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記念日

 加奈子に出会ったのは28歳の5月21日だった。  日曜日に散歩をしていたら、何気なく高台にある小さな展望台が目に入り、天気が良かったので行ってみたのだ。  そこで1人、景色を見ていたのが加奈子だった。  俺はどちらかというと人見知りで、あまり自分から人に話しかけたりはしない。  なのに、そのときはなぜか、俺の方から話しかけていた。
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本気になったら、もう終わり

 私は22歳のとき、大失恋をした。  というより、騙されたのだけれど。  相手は結婚詐欺師で、私から全てを奪っていった。  両親が遺してくれたお金と家。  相手のためなら死んでもいいと思えるほどの恋心。
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損な人生

 僕は生まれつき、体が弱い。  だから、よく風邪をひいて寝込んだりする。  そして、学校行事があるときに限って熱を出してしまう。  遠足や運動会、学芸会、修学旅行。  小学校の時はほとんど、参加できなかった。
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気にしすぎ

 誰しも、好きな人のことは気になってしまうものだ。  好きだから気になる。  もっとその人のことを知りたくなる。  それは当然のことじゃないだろうか。  というか、気にならないなら、それは好きじゃないということだ。  好きの反対は嫌いじゃなく、興味がない、なのだから。
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君からの手紙

「どんなに離れてても、心は一緒だからな」  就職が遠くに決まり、遠距離恋愛になったときに言った、彼の言葉だ。  そのときは少しくさいセリフだなって思ったけど、嬉しいという気持ちの方が勝っていた。  私も、同じ気持ちだったから。
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君の抜け殻

 ある日の日曜日のこと。  俺の部屋に、友人の友広を呼んで掃除を手伝ってもらっている。 「おい、晴樹。これ、どうする?」 「捨てで」 「マジか。もったいねー」
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